一章

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 ニート。  Not in Education, Employment or Training。  つまり、教育も職業訓練も受けていないプー太郎ということだ。  迫水王!  僕は大卒で就職もしていたんです!  思いこまないで下さい!  と、半端なプライドを元気モリモリ勇気100%でぶちまけるほどに、幸か不幸か僕は子供じゃない。  いや、子供だった方がマシな気は十分にするが気にしたら負けだ。  負けたらあかん。  というか、そいつと会話しようという気になれというのがおかしな話なのだ。  俺はとうとう幻覚が見えるようになったんだろうか、そんなに仕事辞めたのショックでもなかったけどなあ……と首を傾げつつ、僕はその舌足らずな声の主を凝視する。  無人の公園のベンチに鎮座かします、無意味に色鮮やかな塗装をほどこされた、身長15cm定規ほどの悪趣味なこけし人形を。 「発言内容もアレならトリップ映像もひどすぎる……やだなあ、とうとう精神病院に通う日がきてしまったのか……」 「にゃ!? ちょいとお待ちよニートちゃん!」 「きれいなお姉ちゃんならともかく、ここまで無益な幻覚を消し去ることに躊躇いはない! ナッシングだ! さよなら、僕のサンドロック!」 「サンドバックが何にゃ! このニートニートニートニートニートニートニートニートニートニートニートニートニートニートニートニート!」 「あー聞こえない! 聞こえないね! もっといいものに変身して出直してください!」 「だから変身するのはお前にゃニート!」
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