元服

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「竹千代も嫁を取る歳になったか。」 昼寝をしている亀と富宇をあやしている祖母様が独り言のように呟いた。 祖母様は俺の祖父 松平広忠に嫁いで父上を産んだが、後に離縁。 その後、久松俊勝(俺にとっては義理の祖父)に嫁いでいた。 この祖父様(本人が祖父様って呼べって言うから…)は、永禄6年に起きた桶狭間の戦いで、父上が今川家から独立したのを機に、松平家に仕えるようになった。 そのため、こうして何度か孫の顔を見にやってくる。 「はい、その前に元服するそうです。」 「そうか。まだ早いような気もするが…」 「そうですね。」 そう言えば、祖母様に気になる事を聞きたかったのだが…今聞いて大丈夫かな? 「あの、祖母様。」 「何じゃ?何か私に聞きたい事があるようじゃな。」 「え?」 「顔に書いておるぞ?ふふ…元康の小さい頃によう似ておるな。」 何か祖母様には何時まで経っても敵わない気がして来た。 「何故、母上をお許しになったのですか?祖母様にとっては今川家は仇のようなものですが。」 「そうじゃな…。私も会う前は、瀬名殿の事をあまり快う思うておらなんだが…。会ってみると、瀬名殿は元康に…いえ、松平家の妻として、己の命を捧げる心があるとよう分かった。 今川家の縁者申せど容赦せぬと思うておった私がひどく恥ずかしゅう思えてな…。 其方たちの母上は、皆が思うておる以上に松平家の事をよう考えておいでじゃ。」 そうなんだ…。母上、良かったね。 史実じゃ、中々城に入れて貰えず、姑である祖母様と確執抱いたままだったけど…。
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