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だがその時は急に訪れた。
車が減速することも無く、明らかに静華に向かっているのだ。
しかし幸か不幸か、当の本人はそれに気づいていなかった。
(やばい…!)
そう思った時には体が勝手に動き、静華を突き飛ばしていた。
そして気付いた時には俺の体は空へと高く宙を舞い、重力に従うように落下を始めていた。
(あ、これは死にましたわ)
自然と痛みは無いが何故だか絶対的な確信があった。そして余裕もあった。
(意外と俺の人生って呆気なく終わるのな。あ、そういえば静華は?)
自分の人生をかけて助けた彼女は、ただただ呆然と彼を見ていた。いや、見ることしかできなかったのだろう。
(結局一番伝えたかった言葉を伝えらんなかったしなー…あぁ生まれ変わったらチートになりてぇな…)
既に感覚のない体で精一杯彼女に微笑んだ彼が最後に目にしたのは、最愛の人が泣き叫ぶ姿だった。
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