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花火と同時に踊っていた盆踊りは
花火が終わるのと同時に終わった
僕は汗でびっしょりだったが
さっきの中年の男がタオルを貸してくれた
「兄ちゃん、ご苦労様
タオルで汗でも拭いとけや」
中年の男は気さくに笑いながらタオルを僕に渡した
僕はそのタオルを使って
身体中に出ていた汗を拭き取った
「そういや兄ちゃん
あんたどこから来たんだい?」
中年の男は着ていたハッピを脱ぎながら聞いてきた
「滋賀県から来ました」
僕は来た道を指しながら答えた
「へぇ、こりゃすげえな
いったい何でそんな遠いとこから?」
中年の男は目を丸くさせながら驚いた
僕は事情を知らない中年の男に何でここまで来たのかを全部話した
「なるほど、父親が離婚して千葉で暮らしてるのか、しかも母親の反対を押し切って………」
それを聞いた中年の男は涙を流した
「泣かせる話だねぇ
兄ちゃん、あんた頑張ってるねえ
今日はもう家に泊まりなさい!」
中年の男は僕の腕を掴みながら言った
僕は焦って断ろうとした
「いやいや!?いいですよ
迷惑になりますよ!?」
「そんな訳にはいかねぇ
わざわざ頑張っている少年をみすみす野宿なんかさせられっかよ!!
来い!」
っと僕の断りを気にすることもなく
中年の男は僕を引っ張っていった
―――――――――――
引っ張られながらついた家は木造建築の和風な感じの家だった
家の表札を見る限り中年の男の名字は内田というらしい
内田さんは僕に 少し待ってろ と告げ口をし
玄関の中に入っていった
家の中の様子は分からなかったが
多分 一生懸命頼んだのだろう
中年の男の方の内田さんの妻らしき人が出てきた
「どうぞ、早く入りなさい
暑かったでしょう?
自転車は後で主人に取りに行かせますから」
妻の方の内田さんは優しく僕を迎え入れてくれた
中に入ると僕より年下くらいの女の子が静かに階段を昇っていった
「私の名前は花予(かよ)
今、上がっていった娘が麻衣(まい)ちゃんで
主人の名前が徹雄(てつお)と言うの
あなたのお名前は?」
女の子の方を見ていた僕ははっと振り返り答えた
「西田和也(にしだかずや)です
今日はよろしくお願いいたします」
僕は頭を下げた
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