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思い出すのは二日前。
大男が、ピンクの可愛い抱きつき枕と共に俺の部屋にやってきたのが悪夢の始まりだ。
「しばらく泊めてくれ」
俺は、ゆっくりとドアを閉め……、
「いやいやいやいや! せめて話だけでも聞いてくれ」
俺が冷ややかに見つめると、怖そうな威圧的な顔が申し訳なさそうに俯いて、頭を掻いた。
「――どうぞ」
本当は嫌だったが仕方なく部屋に招き入れた。
ピンクの枕を抱き締めながら座る大男。
この高校で知らないやつは居ない。俺でさえ、知っている。
葉山 慧(はやま けい)高3のスポーツ特待生。
身長は190近くあり、バスケ部部長だった為に体格も良い。
三年になり引退してからは、髪も伸ばし放題、制服はルーズに着崩し、不良も近づけない強面だ。
そして目付きが悪い。いつも怒っているように眉をつり上げている。
クラスは違うが、授業中も鼾(いびき)を掻くほどふてぶてしく眠るらしい。
――俺とは無縁の人間だと思っていた。
「単刀直入に言うと、風呂で寝てたら床下浸水が起きてさ。
部屋、工事中なんだ」
「そう。2段ベッドの上で寝れば解決だな。
さ、さっさと部屋に戻れ」
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