―はじまり―

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緊張しながらも学ラン姿の新入生は恐る恐る手を挙げていた。 「何でしょうか?」 「屋上からこんなゴミが……」 渡されたゴミは『つぶつぶ餡パン』と書かれた袋。 見上げると、立ち入り禁止のはずの屋上の扉が開いていた。 「ちょっとすみません。あ、教頭先生!」 団扇でパタパタ扇ぎながら、校舎から歩いてくる教頭を捕まえ、新入生の部活見学を頼んだ。 そして俺は、屋上へと向かう。 餡パンの袋を握り締めて。 「ふーくーかいちょー!!!!!」 屋上に駆け込み、叫ぶと、すぐに給水タンクの上から誰かが飛び起きた。 「あー、絢ちゃん。やっば。私、遅刻?」 サラサラストレートの長い髪を風に靡かせて、 呑気にコーラをラッパ飲みする美少女。 正確には、後輩たちから美少女、美少女と遠巻きに慕われているが、中身はただのオッサンの副会長だ。 「ゴミを捨てるな! パンツが見えるから胡座をかくな! 新入生が待ってるからさっさと体育館へ行くぞ」 「ほーい。あーあ。風がお昼寝しろって言ってたのに」 可愛い小さな口を、隠しもせずに大きく開けて欠伸をした。 スカートなんて捲し上げて、内股をバッリバリ掻いている。
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