魔王とエリンジュームの華

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太陽が真上に来た頃に漸く目的の山迄たどり着いた。 ここまでの道のりは思ったよりも平穏で少し物足りない。今のところエンカウント率は低め、魔王の気配は抑えているとはいえ平和そのもの。報告書に揚がっていた事以外は西の国は落ち着いているのだと推測した。 山道の入口に差し掛かると肌寒い空気が漂っていた。この山は不思議なことに真昼にも係わらず寒い。こんなことを言うと変に思われるが西の国はオアシスが点在するほど暑い国だ。標高がさほど高くないにも係わらず雪が降るという現象が起こるこの山の報告は受けていたが体感してみると奇妙以外なんでもない。ジェイの説明ではここは氷雪の呪いがかかっているらしい。山の麓なのに高山植物が生息していたりとかなり生態系もめちゃくちゃだ。神の悪戯としか思えない場所である。 山道を歩いていると一つの淡い紫色の花が咲いていた。花を見つめていると、 ジェイ「エリンジュームの花か。レオンさぁ…アル坊を連想した?」 レオン「は?何故そうなるんですか?」 ジェイ「なんとなく?」 レオン「………」 ジェイ「ほら、アル坊の瞳の色に似ているだろ?レオンはエリンジュームの花言葉を知っているかい?」 ニヤニヤ顔で話してくるジェイをみていると少しイラついた。 レオン「知るわけないでしょ?ジェイはなんで花言葉に詳しいんですか?」 ジェイ「そりゃあ、女の子口説くため!女の子はそういうの好きだからねぇ。それにこれでも俺ってエルフよ?植物には詳しいよ。」 レオン「ふーん」 ジェイ「まぁ、レオンにはこんな小細工なくても寄ってくる女の子はたくさんいたから必要ないか。」 レオン「チャームの事を言っているのですか?私のあれは謂わば呪いの類いです!」 ジェイ「呪いだろうがモテるのはいいことだろ?」 レオン「私的にはノーサンキューです。揉め事に発展して後始末に困ります。」 ジェイ「魔王になってもチャームは健在か…。モテモテ魔王様♪」 レオン「笑い事じゃないですよ。魔王の力を持ってしても解けない呪いなんですから。」 ジェイ「仕方ないだろ…。それは神の祝福なんだから」 レオン「ありがた迷惑です。」 ブスッとして答えたが、ジェイは笑いを噛み殺していた。 ジェイ「ほんと人間らしくなったよな。感情豊かでさ。変わったよ…良い意味で」 レオン「…人の事からかってないでちゃんと案内してくださいね。」 ジェイ「はいはい。」 再び山道を登り始めた。
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