魔王、旅に出る

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レオン「村雨が予言ですか?」 妖刀村雨「予言ではない予感ぞ」 レオン「分かりました。心に留めておきます」 レオン「さて、雑談はこのくらいにしてコレ《男勇者》を帰さなければですね…。取り敢えず回復魔法掛けてッと」 魔法の詠唱無しで勇者の傷を治す。まあ、元々かすり傷しかついていなかったのだから。 レオン(んー。何処に帰しましょうか?…まあ、また彼には頑張って貰うとして、んー。振り出しまで帰って貰いましょうか。うん。それがいい、もっと経験を積んでもらわないと) そして、男勇者の傍らに立ち体の一部に触れ指をパチンと鳴らした。 するとふたりを取り巻く景色は溶け込むように変わり城内に居た筈が青空の下、草原の真ん中に立っていた。 柔らかい風が頬を撫でる。辺りを見回すと近くに城壁に囲まれた街が見えた。 レオン「どんなに時が過ぎようがこの辺りはあまり変わらないですね」 妖刀村雨「ここは?」 レオン「ここは始まりの街と呼ばれている所です」 妖刀村雨「随分と懐かしそうじゃの?」 レオン「久しぶり?そうですね…かれこれ200年振りでしょうか?」 懐かしげに城壁の方に目をやり物思いにふける。 ふと足下に目をやると未だに気を失っている男勇者がいた。そこで自分のすべき事を思い出す。 レオン「じゃあね…男勇者君、また魔王城に遊びにおいでよ」 妖刀村雨「主よ…」 レオン「…」 再び指をパチンと鳴らすと魔王は風に髪を(なび)かせ景色に溶け込むように消えていった。それを見たものは誰もいなく、風に揺れる小さな白い花だけだった。後に残された男勇者はというと、そよ風を受け気持ち良さげに眠っているのであった。
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