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「行ってきます、」
見送りのない玄関先で呟いて、外に出る。
「はよ、」
「…、え、」
バタンと
後ろでドアが閉まる音がした。
「…なん、で?」
塀に背を預けて立っていたのは颯汰だった。
「なんでって、…理由はないけど。」
――――真亜矢の、根回しか…
証拠はないが、なんとなく、そうだと思った。
「とりあえず、行こうよ。」
昔は、俺が颯汰を引っ張っていた。
どこに行くにも
何をするのも
そうた、そうたっ
なんて、颯汰の名前を意味もなく呼んでは、興味なさそうな颯汰の腕を引っ張っていた。
「…はず、」
「ん?なんか言った?」
「いや…、」
颯汰がこちらに視線を向ける。
俺はそれに気がついていないように首を振った。
「昨日さ、」
「…ん、」
返事がかすれる。
「いきなり怒ったりして、ごめん、
だけど多分、ずっと前から思ってた。」
「…、」
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