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「あぁ。言ってなかったもんな。」
そう言うと、優華は乾いた笑いを漏らしながら
「カラオケ、来なきゃよかった…、」
と、呟いた。
「あの人たち。誰?」
俺の問いに優華が目を見開く。
「…、許婚。と、その友人方。」
「…。」
――――イイナズケ。
「許婚…?」
「そう。今時おかしい?」
嘲笑うように優華が口の端をあげる。
悲しそうな瞳が俺を捉える。
「悪い関係じゃないから。安心して。」
「…、」
「じゃ、私…行くね、」
――――許婚って…、なんだそれ。
この時の俺は何が悔しかったんだろう
何が悲しかったのだろう
分からない感情に捕らわれたままのあの時の俺には
優華の気持ちなど
微塵にも気付けるはずもなかった―――
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