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「え、」
「あ、いや、そうじゃなくて、…。その、許婚さん…」
「高城 聡。」
「え?」
「許婚さんじゃなくて、高城 聡。」
「あぁ…。」
なんて言えば分からなくて、とりあえず「許婚さん」とつけた男は
高城 聡と言うそうで
多分、
「許婚さん」なんて呼ばれ方はされたくないんだろう。
高城さんも優華も。
「…大学生なの。」
ポツリと、優華が呟いた。
一粒落ちた雨粒みたいに
一粒。また一粒。
五月雨みたいに
ポツポツと、優華は話し始めた。
話し始めて間もなく、バスが来て
二人席に腰を置いた。
窓側に優華が座る。
「本当に小さい頃に両親に紹介されてね、それから、時々会っていたの。」
優華はこちらを見ることなく、呟くように言葉を重ねる。
窓に反射した優華の表情を横目に見る。
「私が中学にあがるときには、高城さんはもう高校生だったの。」
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