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家柄が元から金持ちで
いわばそれなりのエリート。
そんな家に生まれて
小さい頃。
本当に、小学生のうちに将来の婚約者を紹介され
結婚なんて想像もつかないままに約束して
大人になっていくにつれて
意味と責任の重さを理解していく。
そして、いつの間にか逃げられない現実と否が応でも向き合って
今はもう半分の諦めを持って毎日をおくっているのだと思う。
俺の考えなんて及ばないくらい
重い責任を背負って生きてきたこの隣の奴に
安易にかけてやれる言葉なんか
どこにもなくて
声がつっかえる
「…辛くなんて、ないんだよ?」
俺の心情を察したのか、優華が呟いた。
「高城さん優しいし、婚約の話だって全然。私の気持ち尊重してくれるし、」
優華が静かに早口に話す。
自分に言い聞かせるように、
優華自身を諭すように。
「でもさ、」
言葉が途切れて、数秒。俺は優華の様子を窺った。
「こうして話を聞いてくれる人がいたら、もっと楽しいかな…。」
優華が優しく微笑む。
俺もつられるように、微笑みかえす。
「あぁ、話なんかいつでも聞いてやるよ。」
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