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「では豊くんの脳に直接リンクするから擬似体験してくれ」
豊は北條良雄から送られた膨大なイメージを受け取った。
豊は一瞬、目の前が真っ暗闇になり、耳鳴りがした。
そして急激な目眩に襲われた。
暫くすると目眩が収まり霧がはれるように視界が開けた。
豊は自分と良雄が一体になったように感じた。
不思議な感覚だった。
自分が良雄になって過去の良雄や友達の映像を見ているような感覚だった。
高校生の時の俺は若い頃の柴田恭平に似ているせいか、告白をよく受けたなぁ。
高校の時は下駄箱にどっさりと手紙の山が投げ込まれていたな。
良雄は野球部に属している事も、人気に拍車をかけていたのかも知れない。
下駄箱に投げ込まれていたラブレターの処理は、同級生の山下進が受け持っていた。
山下進は愛嬌のある顔でクラスの人気者であった。
俺は手紙は読まずに、ごみ箱に捨てていた。
ところが山下が俺に処分させてくれというので彼に任せた。
豊は自分が良雄になって過去を思い出しているような錯覚を覚えた。
『豊くん。混乱しないで。あたしが脳の回線を一部遮断したから大丈夫よ』
香が豊の脳に語りかけた。
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