嘘流し

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「人間て、面白いなぁ......」  橋の上で、その存在は呟く。手にする小瓶の中身を、川に流しながら。  “嘘流しの呪い”を与えた液体は水に溶け、川に呪いを浸透させる。 「一年で三人か......思ったより少なかったな......」  それは、噂を実行し、呪いを受けた人間の数。 「他の動物は、あんまり変わんなかったんだけどなぁ......。人間て自分に嘘つきすぎだろ」  人間は、無意識に自分に嘘をついている。例えば、“自分は人を殺すような人間じゃない”という嘘。しかし、本能的には誰かしらに殺意を抱いている。  つまり、嘘が流されたその人間に残るのは、明確な殺意。男の場合、残ったのは過剰な愛と、大きな憎しみだった。理性は嘘が流れた瞬間麻痺し、男を奇人へと変貌させた。 「一人目は殺人、二人目は暴食、三人目は強姦に殺人......」  その存在は考える。目立つのを避けるため、誰もやらないような噂を流したが、もうデータは取れた。もうどうしようが、上から文句を言われる事は無い。 「いっそのこと、空からばらまいてみようかねぇ......」  不気味な笑みを浮かべ、その存在は闇へと消えた......。                fin.                           
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