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澄んだ空、照りつける太陽、草の葉香る真夏日。
風が吹き抜けて行く丘で、大の字に寝転ぶ男が1人。
学ラン姿なので授業を抜けた学生に見える。
「だーるい。かったるい。」
黒く短い髪をいじりながら、空を見つめため息を1つ。
今度は何かを考えるように手を顔にあて深呼吸。
「なーんで人は道に迷うのかね。」
絶賛迷子更新中だった。
歩き疲れて、休憩がてら座り込んだのが間違いだった。
あまりの心地よさに、その場に寝転んでしまってから2時間。
その半分以上は本格的に寝てしまったわけだが・・・。
ともかく、この状況を打開しようとしたのがついさっき、考えてもわからなく、めんどくさくなったのがたった今の話だ。
また意識が遠のき始めてきた・・・このまま寝てしまおう、と思った時だった。
不意に、ポケットに入れている携帯が、着信音と共に唸りをあげた。
しばらく放っておくと、鳴りやむことなくポケットで震えている。
仕方なくガラケーを開き、これまた仕方なく電話にでた。
「どこに居んのよ!!この馬鹿!!あんたね、集合時刻聞いていたわよね!?今すぐ来ること!!時間ないのよ!?」
「・・・あんさぁ・・・。」
「なによ。言い訳なら聞かないわよ。」
「なんで、人は道に迷うと思う?」
「馬鹿!!めんどい男ってほんとに嫌っ!!まってなさい、直ぐ掛けなおすわ。そこ動いたら・・・首が飛ぶわよ。」
無造作に切られた電話をポケットに戻し、再び空を眺める。
明るかった空が、雲も無いのに暗くなった。
目を少し上に向けると、それが人影だった事に気づく。
脇にあった木の棒を使って立ち上がり、影の主を見ると、二人の男が鬼の形相でこちらを見ていた。
「空井・・・だな。」
筋肉質の男がそう聞いてきた。
「小鳥グループの空井だな。」
もう1人の細い男がそう聞いてきた。
「わり。俺、ここ動いたら怒られるんだわ。だからさぁ・・・。」
「うるさい、黙ってやられてろ!!」
二人の男の手には拳銃のようなもの。それは静かに空井と呼ばれた男に向いていた。
「だぁ、かぁ、らぁさぁ。ここを動かないで相手するわ。」
話しは遡り、今、この状況を説明するには、彼の期末テストの話からしなくてはいけないだろう。
空井 多鳥(そらい たどり)現在高校2年生。
名門高校に通う生徒なのだが、わけあり高校生なのだ。
時間は戻る事3日前、期末テスト前日から始まる。
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