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「と、父さん!織羽から離れろよ」
何故か私の取り合いが始まり、そんなやり取りをお母さんはニコニコと見ていた。
「……もぅ、食べに行くなら早く行こう」
「織羽がそう言うなら行くか」
私の一言で取り合いは収まりそれぞれ忙しそうに準備を始める。
☆☆
家から自転車で数分に行きつけの焼肉店がある。
小さくてほとんど人は居ないけど味は最高で近所しか知らないスポットでもあった。
店の中に入ると早速、薫ちゃんに出迎えられた。
「あっらぁ~、いらっしゃい」
……見て分かる通り薫ちゃんはオカマだ。
「やぁ、今日は織羽の入学祝いで来たんだ」
お父さんが自分の事のように嬉しそうに言うと薫ちゃんも微笑む。
流れるような茶髪に少し濃いメイク、まだ剃り残した髭のここ、焼き肉処の店長、薫ちゃん。
「あらぁ~、織羽ちゃんはもう高校生なのね!今日はサービスし・ちゃ・う」
最後の決めでウィンクされた。
行きつけという事もあって席は適当に選んで座る。
それぐらい空いてる筈……いつもなら。
でも今日は一席、お客さんが来ていた。
仕切られてるから顔は見えないけど5人は居る。
影で分かる。
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