プロローグ

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信号が変わって、人々が一斉に動き出す 以前は自分もその中のひとりだったはずなのに 今は遠い世界のように感じる 少し高い場所から、渋谷のスクランブル交差点をぼんやりと眺めて、10年以上昔を思い出す 九州から東京の短大に進学した私は、不安と期待を胸にこの渋谷にやって来て… テレビではなく目の前に広がるこの光景に、完全に腰が引けてしまった 純粋培養の生粋の田舎育ちには、仕方がないと思う ちょっと背が高すぎる以外は、顔も成績も家庭環境もごく平均的な私 普通に恋愛して結婚して 自分が育ったような家庭を築いていくと信じていた。
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