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新たに散髪屋を探す気にもなれず、いっそバリカンを買ってきて自分で刈るかと呟いたのは覚えている。
ところが、彼は言ったのだ。
「先生……刈るなんてダメですよ?」
透明な小袋に二本入った逸れを差し出しながら。
「お嫌でしたら、僕が切って差し上げますが」
「……いや、いい」
口早に返事を返し、ざっくり纏めた髪を一つに括った。
そんな遣り取りをしたのは、彼が俺の担当として紹介を受けて1ヵ月程たってからだったか。
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