変化したのはどちらだ?

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.  好ましい人間だと位置付けていたからか、小さな変化がやたらと気になる。  縁側を歩く俺の手には丸盆。  秋野君がティーポットで淹れた紅茶と、頂き物らしい焼き菓子がのっている。  仕事場のちゃぶ台に逸れを置き、先程の秋野君の様子を思い出す。  ちりとりを手にのんびり現れたかと思えば、大丈夫かと問う時の眼差しの鋭さ。  一瞬ではあったが、口調が変わる程に心配したのかと思えば、手際よく紅茶を煎れて俺を台所から追い立てた。 「先生、片付けの邪魔ですから仕事して下さいね?」  言葉の内容とは裏腹に、その声には嫌みも険も感じなかった。  今までは無かったが、「好ましい」と、そういうものなのだろうか。  解らん……。 .
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