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 白髪の青年は銀にも似た美しい光を放つ白の衣を身に纏っていた。  青年は淡々と歩き、やがて突き当たった壁に突き出ている小さなスイッチを押した。  スッと軽い音を立てて壁は右に開き、これもまた真っ白な光に包まれた一室を見せた。 青年は音も無くその部屋に入った。  青年の視線の先には、白いロングデスクの一角を黒色で占拠している、漆黒を身に纏う男の姿があった。男は手元のモニターのようなものを一心に静かに見つめ、時折口角を上げたり下げたりしていた。  青年は男に近づいた。やはり男の顔はわずかに笑んでいるようだった。  青年は口を開いた。 「何をしてるんだ」  すると男は、とっくに気付いているというような体で、目線を変えぬまま答えた。 「新しい実験だよ。見るかい?」  いや、構わないと青年が答える間も無く、目の前の薄く白い光を放つ壁が色をつけた。色をつけた、というよりも、何かの映像が映し出されたようだった。その中には、七、八体程の動く物体があった。  青年はそれを見ながら言った。 「……なんだこれは」  見ると、映像の中の物体は人の形を成し、頭部をウンウン前後に動かしながら、手元の何かを手で弄んでいる。白の衣服を纏っているようだった。  男は関心にかられた目で口元を上に歪めながら返事をした。
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