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 青年は受け取り、男が指で止めたページを見た。  次の瞬間、青年の表情が一変した。  真っ青な顔で青年は思わず男を見た。男は相変わらずニコニコと快活な笑顔のままだった。  青年は無意識に小さく唾を飲み込んで、改めてそのページにまざまざと目を落とした。  恐ろしい絵だった。目が目でない、白く無数の何かが、身をすくめて怯える何かを今にも喰らい付こうとしていた。  いや。青年はページの隅に目をやった。  何かの一体が何かに喰われた描写があった。頭部が無く、そこから大量に辺りに飛び散る赤い液体。その近くに立つ、どこか満足げで満足そうでない顔の何か。  青年は震えた手でページを閉じた。震えを我慢できなかった様子が、表情から伺えた。顔からはすっかり血の気が失せていた。  それでも気丈な目つきを保ち、青年は問いかけた。 「……これは何だ。いったい、このページは何なんだ。こんな……」 「恐ろしい?」  男は再びチェアに腰かけていた。見ると、手元には黒色の小さなマグカップがあった。どうやらコーヒーのようだが、いかにも美味そうにそれを飲みながら男は答え、カップを下した顔は笑顔であった。  青年は少しいらだちを覚えた。もっともそれは先程目に入れたページの胸糞の悪さのせいなのだろうとは考えていたのだが、それでも多少目つきは厳しく変わっていた。 「なんなんだ、あの絵は。あんなにも奇妙で気分が悪い絵を、俺は初めて見たぞ」 「そりゃあそうだよ」  男はチェアにもたれかかり、マグカップを円状に回しながら言った。 「あれは『悪夢』の絵だ」 「『悪夢』……?」  そう、と言って、男は映像を見据える。
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