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 俄かに男の目が活気を帯び始める。目に力が戻り、男は口元に笑みを浮かべて椅子から激しく音を立てて立ち上がった。そして語気鋭く言った。 「……良くて九割!成功だ!行くぞ!」 「何?あ、おい!どこへ行く気だ!」  部屋を出る直前、男は立ち止まった。じれったそうに強く頭をかきむしり、マントのような形状の漆黒の衣が大きく揺れた。 「実験が成功したんだ!良くて九割!残りの一割を取りに行くんだ。そして君は来るなよ!」  そう言い残して男は一筋だけ風を残して部屋から出て行った。  青年は納得のいかぬ顔でその場に暫し佇んでいた。  だがやがて少し時間が経つと、口惜しそうに何か負け惜しみの愚痴を吐いて、再び映像に向き直った。
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