第5霊:求めるは、過去の日々

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こういう場合、まず順を追って説明するのが妥当だとは思う。 だが、しかし妥協という精神もまた大切だと強調させてもらおう。 では、妥協して結論から言わせていただこう。 僕は助かった。 不才の銃弾を喰らわずにすんだのだ。 と言っても、別に僕が、神業な速さで不才の銃弾を回避したとかではない。 そんなファンタジー要素など何一つない結末だった。 不才の拳銃には実弾は一発しか入っておらず(本人曰わく意図的にらしいが、にわかに信じられない話である)、鉛玉が僕を貫くことはなかった。 鉄砲こそ喰らっていないが、それこそ鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていたというのだから面白い話である。  新種の言葉遊びとして普及してもよいものだと思うのは僕だけなのだろうが、妹辺りならば共感してくれるに違いない。 さて、話題を元に戻そう。 不才は一芝居うったあとに、満足そうに口角をつり上げた。 「言っただろう?僕は君を助けない。だけど、それを可能にするレールは引いてやることは出来るって」  あらかじめ話す内容を考えていたかのような口振りで不才は語った。 「だけど、それは君次第だ。君にその意志がないのなら、君はもれなく家族全員と天国に逝っちゃうことになる」 あらかじめ用意していたかのように不才は一つのカプセルをくれた。 「さぁ、最後の選択だ。菅原少年」  あらかじめ決めていたかのような問いを不才は告げた。 「自分と、その繋がりを守(す)くう為に他者を救うか。それとも自分の望む日常を守(す)くう為に他者と、自分の繋がりを拒否するか……答えは二つに一つだ」   
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