移転

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「俺の顔に、なんかついて……あっ」 社長さんは笑いながら白いヒゲを取った。 ……なんで白いヒゲなんて? まるでサンタだ。 「あ……ヒゲのことは気にしないで。  改めて、俺は社長の静寂佑輔(シジマ ユウスケ)。  31歳で独身」 そう言うと社長さんは 会社の名前と、社長さんの名前が書かれた 名刺を差し出した。 「君は……桜崎雪葵さんだよね?  早速で悪いんだけど……」 名前の確認をすると、すぐに社長さんは 私に仕事の説明した。 説明は、とてもわかりやすくて、 どんどん頭に入っていく。 「分からないことがあったら聞いてね。  俺のことは佑輔って呼んでくれればいいから」 「そんなこと言われても……いきなりは……」 「はは、そうだよね。じゃあ好きなように呼んで」 私は静寂さんと呼ぶことに決めた。 ……これだけで一気に距離が縮まった気がした。 「仕事ぶり、期待してるよ」 静寂さんは立ち上がり、 私にそっと肩を置き、また座って仕事を始めた。 「は、はい!」 私は気持ちを引き締め、 社長室を出た。
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