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夏にさしかかそうかというある日、私は久々に地球に戻り家族に会っていた。
「ほら、涼!次はこれを着てみて!」
「はいはい」
例のごとく母さんの着せ替え人形と化しているが、最近では特に苦になるというわけではない。
これが果たして女としての自覚による変化なのか、単に諦めが付いただけなのかは議論の余地を残すところである。
「おばさんも楽しそうね」
野次馬に来ていた同級生にして幼なじみの葵が、鼻歌混じりにクローゼットから出した服を選ぶ母さんの後ろ姿を見ながら囁いてきた。
「まぁ、男二人兄弟だったしね。私も一回死んでるし、余計嬉しいんだと思うよ」
「ふーん、にしても……これはやり過ぎでしょ」
「ふひゃぁっ!?」
いきなり葵が胸をつついてきたので、背筋にはしるゾワッとした感覚に思わず変な悲鳴を上げてしまう。
「やっぱり、私より大きい……このー!!」
「鷲掴みしないで~!」
「涼、次はこれね!葵ちゃんもどれか着てみる!?」
「はい、是非!」
母さん……少しは止めてよ……
そんな期待などどこ吹く風で、二人はわいわい騒ぎながら服を選んでいくのだった。
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