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再び辺りを見渡すと、随分と廃れていることが分かり胸が痛む。
蔦の巻きつく屋敷、雑草が伸びた庭、水のくすんだ池、崩れた向かいの家、倒れた電柱………
何よりミサキの心を握りつぶすのは、やはり地面についた大きな足跡だった。
アゲハはしゃがんで足跡を手でなぞり、そしてキョロキョロと辺りを警戒していた。
ミサキが何をしにここまで来たのかは言わない契約だ、ミサキはアゲハを置いて屋敷へ踏み入る。
それに気付いたアゲハはミサキの方へ駆け寄ると、黙って屋敷の中を警戒する。
「アゲハさん、中にいる可能性も……?」
それにコクリと頷くと、背中の機械的な形をした鞘から刀を抜く。
「そ、それは?」
「………高周波ブレード」
いや、そういうことではないのだが、そう言いたかったが話そうとはしないだろうと黙っておくことにした。
鈍く光るそれにミサキはどきりとするが、自分を守る為のものなのだ、そう思うと何処か嬉しくなった。
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