咲いた花は明日に輝く

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久しぶりに吸う屋敷内の空気は、以前よりもどんよりと重たく息苦しいものだった。 密閉されていた訳ではない分、まだマシだが埃や黴などの臭いが充満している。 昔、自分が住んでいた家だと言うのに靴を脱ぐ気にはなれなかった。 「あ、アゲハさんもそのままで結構ですよ」 躊躇なく土足で上がるミサキを見て躊躇っていたアゲハに声を掛けると、遠慮がちに一礼してから黒いブーツをカツンと鳴らせた。 溜まった埃に足跡はついていない、アゲハはそう判断すると、進んでいいぞと言わんばかりに頷く。 ミサキはそれを確認すると、先に進む。 目指しているものは、何処にあるのか忘れてしまった。 広いこの屋敷の中を探し回るのは骨が折れそうだ。 まずは最初に入ったこの、客室から。 そう思っていた時、 「ミサキ………」 「あ、アゲハさん。何ですか?」 ほぼ初めてと言っていいだろう、アゲハからミサキに声を掛けた。 ミサキが振り返ると首を忙しなく回しているアゲハが目に入った。 「安全を確認してくる。………俺が戻るまで、あまり遠くへ移動はしないでくれ」 そうか、屋敷内に獣竜がいないかを確認しに行くのか、そう判断したミサキは 「あ、分かりました」 と答える。
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