ⅩⅣ

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「ありがとうございました~!」 店にいた 最後の客が、帰っていった。 三十平米程ある 広い店内には、 8卓のテーブルに、ゆったりとしたソファーが並んでいる。 暗い照明の店内。 6脚の椅子が並べられた、カウンターの中から、浩介が トレー片手に、出てきた。 客が帰ったテーブルに並ぶ、 ワイングラスと 食べ残したつまみの皿をトレーにのせながら 大きなため息をついた。 「貸切になっちゃったな。 この店、大丈夫か? 俺らが来てから、 今の客入れて、三組だけだぜ」 「ここの店長、 店、三軒も持ってるんだよ。 他の店は、ここと違って駅前にあって かなり売上あるみたいで それで、 まかなっちゃってるらしいよ」 マサルが、浩介の話に 頷いてから、言った。 「しかし、浩介も体力あるよな。 俺なんか、仕事終わって家帰ったら くたくたに疲れてそのままダウンだよ」 「今朝、電話きて 急用、出来たって 頼み込まれたんだよ。」 「店、何時まで?」 「後、三十分。 もう、客来ないな。 直樹(ナオキ) 悪いけど 隣のコンビニで、酒とつまみ なんか、適当に買ってきてよ! みんなで、飲もうよ」 浩介の言葉に直樹が、立ち上がった。 「だな。 居酒屋より安いや」 出口に向かった直樹に、 浩介が声をかける。 「悪ぃ! その間に、俺、つまみ作っとくよ!」 直樹が片手をあげて 店を出ていった。 浩介は厨房に入って片付けを始めた。 「てかさ、結花(ユウカ)達 呼んじゃう?! 多分、あいつら、 この辺りで飲んでるよ」 マサルの言葉に、 厨房から 浩介が顔を出した。 「たまには、 男同士もいいだろ」 優作が隣に座っているマサルに、 小声で言った。 「浩介の奴が、女拒否るなんて 相当、堪えてるよ」 マサルが、 肩を竦めて答えた。 「いやぁ~!ありゃ堪えるよ。 たまんねぇだろ……」
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