ⅩⅡ

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「今日は、 いろいろごめんね。」 病院の前で、 和くんを見て、私は弱く笑った。 「本当に一人で大丈夫? 俺さ、 ここで待ってるから」 私は和くんをじっと見つめて 首を大きく振った。 「大丈夫。 私を、守ってくれる人がいる事が 気に入らないんだって思うの。 だから、一人で行く」 和くんは、 黙って私の手を、握りしめてくれた。 「ごめん…… 俺、結局なんにも出来なかった」 私は大きく首を振って、和くんを見て おどけて言った。 「次のデートに、 遊園地 連れて行ってもらえるように、 私、頑張ってくる」 和くんが頷いて、 私の頭を、ぽんぽんと撫でて笑った。 「行ってくる」 「彩ちゃん携帯ないから 俺から連絡、出来ないからさ。 病院で、 何もかも終わったら、 必ず電話してな」 和くんを真っ直ぐに見て頷いてから 私は車を降りた。 和くんの車が 見えなくなるまで 私は手を振って、見送った。 何もかも……? 何もかも、 終わる日がくるのかな…… 冷たい風が、頬をさす。 くるりと向きを変えて 私は、 大きな病院をじっと見上げた。
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