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ソファーに座って バッグから、煙草を取り出した。 何度も、ライターを握り直して、 ようやくついた火を眺めて 、自分が震えていた事に、気が付いた。 深く吸い込んだ煙を吐き出しながら、 必死で気持ちを落ち着かす。 サイドボードの引き出しを、くわえ煙草で開けた。 入っていたノートを取り出して、 パラパラとページをめくる。 料理のレシピが書いてあるページを見つけて、手が止まった。 浩介。 ここで、 手料理食べたんだね。 美味しいね。って そう言って笑ったの? かっとして、ノートを破り捨てた。 涙が頬を伝う。 悲しいより、悔しくて 煙草をテーブルに、こすりつけてもみ消して泣いた。 引き出しに入っていた、ハサミをとって立ち上がった。 気持ちが止まらない。 クローゼットを開けて かかっている服を、何枚も部屋に放り投げた。 私には 着れそうにない、派手なワンピースを手にとって 怒りが、 又、こみ上げて ワンピースの胸元にハサミを入れてから、 びりびりと手でひきちぎった。 クローゼットに備え付けられた鏡の中には ファンデーションでは、もう隠すことも、出来なくなった皺のある醜い顔の私がうつっていた。 叫びながら ソファーに置いてある ぬいぐるみに、 ハサミを突き刺した。 足りなかった… 何をしても、足りない。 叫びそうになる自分を抑え込んで息を止めた。 帰らなきゃ…… 急に我に返って バッグを手に取って 立ち上がった。 バックの中の携帯がなって 体がびくりと震えて 私はまた、がくがくと膝を揺らしてソファーに座り込んだ。
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