始起

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しとしとと泪を落とす昏い空 厚い黒灰色に覆われた空は見るだけで気分を重くさせる そんな空の下を道に敷かれた雨水の絨毯を踏み締め歩く影があった それは女性だった 色が抜けたような真白の長髪を揺らし、狼のような鋭い緋眼に雨のせいか苛立ちの色を浮かばせ、黒づくめの服装に黒い蝙蝠傘という正反対の色を纏い歩いていた 「あ~っ、くっそ……。急に降りだすとかついてねぇなぁ」 そう言ってうんざりと曇天を見上げる彼女の名は夜凪真理(ヤナギマコト) わりと名前の知れた何でも屋である 「ハァッ…………ん?」 自分の住処への距離を考え、その長さにため息を吐いていると何かに気づいたかのように歩みを止めた
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