【第一章 赤の魔女】

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 その他もろもろの説明や、彼女の持ってきたパンフレットや資料に家族全員で目を通し、その日のうちにオレはリリアネス魔法学園への入学の誓約書にサインしていた。  ノリだけで生きてるような母さんはまだしも、堅物な父さんまで反対しなかったのは、意外だったけどな。  それから昨日までの2か月は、期待半分不安半分で大変だった。王冠乗せた姿を何度妹に笑われたことか。  そしてやっと異世界へやってこれた昨日は、こちらでの拠点となったぼろアパートの一室の掃除と荷物の整理、それから同じアパートの住人にいろいろ教えてもらって一日が終わった。  つまり、今日がオレの実質の異世界デビュー日。とくればやるべきことは一つだ。  手に持った地図を確かめ確かめ進む。その間まわりの物珍しさにきょろきょろするオレは、はた目には都会に出てきたばかりの田舎者に映っていることだろう。  それも仕方ない。おそらく今歩いているのは商店街だ。  見たことあるものやないもの様々な食べ物が並んでいるかと思えば、あやしげなアクセサリー屋の看板に魔法具ありますと書いてあったりする。  なにより道行く人々が帯剣していたり、髪の色が青やら緑やらピンクやらこれぞ異世界って雰囲気を漂わせているんだ。そりゃあテンションも上がるってもんだろ。  そうやって色んなものに目移りしつつも、ようやく目的の建物が見えてきた。  三階建てくらいの建物の上部に、二匹の獅子をかたどった紋章が掲げられていて、開け放たれた扉からは、大勢の話し声と酒の匂いが漂ってくる。テンプレとはいえ、朝から酒飲んでるってのはどうなんだ。  そう思いつつオレが入っていくのは魔道ギルド。やっぱり異世界といえばここだよな。
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