【第三章 異世界生活】

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「わたし、体が弱くて屋敷から出たことがあんまりないんですよ」 「ああ、それでか。ん? じゃあこんなとこまで出歩いて大丈夫なのか?」 「最近はお姉ちゃんのおかげでよくなってきていますから、この町の中を歩き回るくらいなら平気なんですよ」 「へ? お前んちってこの町にあるのか?」  尋ねると、リスが木の実をかじるようにコロッケを大事そうに胸の前で両手でしっかりつかんだまま、ぴょんと後ろに飛びのかれた。 「わたしたちの住所を聞いて何をするつもりですか! まさかお姉ちゃんの古着を物色して……」 「しねえよ! じゃなくてこの町に家があるなら、なんでシエナのやつは一人暮らしなんてしてんだ?」  てっきりクリスみたいに実家が遠いんだと思い込んでたわ。 「そ、それは……」  訊いたとたんに包丁娘は顔を曇らせる。やべ、してみたいからとかそんな軽い理由かと思ったんだけど、聞いたらまずいやつだったか。 「……わたしのせいなんです」
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