【第三章 異世界生活】

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「それで、なんでその薬って人気なんでしょうか?」 「さあ、しらね。オレこの世界に来てまだ一週間だし、細かいとこまでは分かんねえよ」  こっちでの生活と魔力の扱いに慣れるので精いっぱいで流行り廃りまで追ってる余裕はない。  まあ、そもそもオレってあんまり流行に敏感なタイプでもないしな。 「違う世界の人だったんですか!?」  目を輝かせて、ずいっと身を乗り出してくる包丁娘。儚げな印象を秘めた瞳は見開かれ、その中に映りこんだ自分と目があってあわてて一歩下がる。近い、近いって。  この世界は、オレみたいな魔力を目覚めさせた他の世界の住人に、その扱い方を教えているため、異世界人ってのも割といるらしい。  だから、こんなに驚かれたこともなかったんだけど、 「わたし、他の世界の人に会うのは初めてです!」  出歩いたこともあんまりないってんじゃ、こうなるのも仕方ないのか。 「どうしてこの世界に?」 「『空白獣(ブランカー)』に襲われたときにこの『心器(しんき)』が出てきてな。で、魔力の扱いを覚えるってことでこっちに来たんだ」
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