【第三章 異世界生活】

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 頭の上を指し示すと、包丁娘の視線もそちらへ向かう。 「ああ、それ心器だったんですか。変わった趣味かと思ってました」  やっぱりいくら魔法の世界でも王冠は変か。赤髪や青髪や緑髪や、浴衣だのメイド服だのが街中歩いてるんだから王冠くらいいいだろうに。ダメか。 「ずっと出してるってことは常時発動型の能力なんですか? あ、でもそれだと魔力消費が大変そうですし、自動発動型の方ですか?」 「いやーそれがさ、出しっぱなしなのは、魔力障壁を維持するためでな。まだどんな能力なのか分かってねえんだ。ついでにこいつの名前もまだ知らねえし」  ハハハと乾いた笑いでごまかすも、包丁娘は呆れた視線を向けてくる。 「能力不明の上に、心器なしでは障壁の維持もままならないんですか。マイナス5ポイントくらいですね」  何その減点方式。落とすためにやってる粗探しテストかなんかですか。  害虫呼ばわりの初手駆除からさらに点を落とすとは、さすがオレ。この分なら自分の人生を落っことす自堕落道を極められる日もそう遠くはなさそうだ。 「それじゃあ、心器の声を聞いたりはしないんですか」 「なに、心器ってしゃべんの? 意識とかあるのか?」  初耳なんですけど。なに、引けば老いるの? 臆せば死ぬの?
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