【第三章 異世界生活】

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「どうしたんですか!?」  尋常ではないオレの様子を察したのか、包丁娘が肩をゆすって声をかけてくる。  そのおかげで何とか動けるようにはなった。なったけど、ヤバい。何かは分からんけど、とにかくさっきのはヤバい。 「今の声どこからしたッ?」  焦る気持ちに押させるまま怒鳴るようになってしまったオレの問いに、 「声、ですか?」  包丁娘は首をかしげるだけだった。 「見つけたって変な声がしただろ!」 「いえ、わたしは何も聞いていませんよ」  きょとんと首をかしげ、肩口で切りそろえられた水色の髪を揺らすその姿は嘘をついてるようには見えない。  本当にどういうことか分かっていないって顔だ。  聞き間違い、空耳、いろんな可能性が浮かぶけど、たぶんどれも違う。  さっきの声に込められた圧倒的な害意は勘違いなんてありえない。鳥肌が全然おさまらねえし。
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