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「たしかに、オレの名前は黒上史郎(くろうえ しろう)ですけど、」
なんですかその悪意ある特徴は、と続ける前に受付さんはオレの背後で酔っぱらってる一団に声をかけた。まあ、予想はつくけど。
「イロちゃぁん。シロウさん来ましたよぉ」
やっぱりか。唯一の心当たりは大正解だったようだ。というか、昨日紹介しておくって言ってくれてたからな。
朝から酔ってる姿に忘れてるかもと思ったけど、ふざけつつも話は通してくれてたんだろう。
「おー少年、やっと来たか。待ちくたびれたぞ」
長い金髪をひとつにくくり、下はホットパンツ上はビキニのみという格好で両手に酒瓶を掴んだままこちらに向かってくる彼女はイロ・スーレンス。
オレが住むことになったぼろアパートの住人で、このギルドを紹介してくれた張本人だ。
「イロさん。話しておいてくれたことは感謝します。でも、あの特徴は何ですか」
「ははっ、妹さんの手紙を見せただけだから、文句ならそっちに言ってくれ」
「妹の手紙?」
「ああ。ほら、これだ」
そういって手渡されたのは一枚の手紙。ピンクの便せんに見覚えのある丸っこい字で書かれたそれには、
『目は死んでるし髪はトゲトゲだし、セコいしすぐふざけるし言い訳ばっかりするし、いつも変態面のどうしようもない兄ですが、悪い人間ではないのでよろしくお願いいたします』
「悪くない要素ねえよ」
てか、百歩譲って目はいいとしても髪は関係ないだろ。
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