【第三章 異世界生活】

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 ひとえに『空白獣(ブランカー)』と言ってもその姿は千差万別だ。ゴリラもいればライオンもいる。  では今回目の前に立ちはだかる奴はどうかというと、人狼だった。  ワーウルフ、狼男、何と呼んだとしても人の体に狼の頭という姿は確定だ。  いや、深い毛皮に被われ鋭い爪を伸ばしたその腕はとうてい人のものとは言えないか。  体長は2メートルといったところ。大きさだけならギルドランク試験の時に出会ったライオンの方がデカイ。  けれど、その強さは段違いなのが分かる。  周りに生える木々だけでなく、それらを支える大地すらも氷でできている。さらに空中には巨大な氷塊が浮島のごとく漂っているしまつだ。  空白獣と対をなすこの『彩色空間(さいしきくうかん)』の異質さがそのまま奴の実力を嫌というほどに示している。  しかもいまだに魔力を察知する能力の低いオレでさえ膨大な魔力量に肌がひりつく。隣の包丁娘に至っては腰を抜かす寸前だ。  視線だけを動かしてなんとか包丁娘の状態を確認した一瞬だった。 「来ますッ!!」
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