【第三章 異世界生活】

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「あ、あの! もしかしたらここから抜け出せるかもしれません!」 「え、マジでか!」  あ、やべ。言ったそばから振り返っちまった。  視界の外から迫る圧迫感。回避、は間に合わない。なら、 「ぐッ!!」  あえて一歩踏み込み、魔力を集めた両腕で人狼の手首の当たりを受け止める。  それでもなお両腕にしびれが走るレベルだけど、爪にやられるよりはましだ。  魔力が高すぎるってのも難儀なもんだな。目で追っていなくても、なんとなくの位置は分かる。でも、なんとなくだけでもう一度はやりたくねえな。 「それで、抜け出せるかもってのは」  振り返らないまま叫ぶ。 「ほんの少しでいいので時間を稼いでください! この空間から抜け出る準備をします!」  具体的な説明はなしか。足音から包丁娘が離れていくのが分かる。 「まあ、詳しく聞いてる余裕もないからなっとぉおお!!」  瞬間的に距離を取り、再度打ち込んできた人狼の一撃を派手に飛んでかわす。  こんなの相手に時間稼ぎってのは無理ありすぎる気もするけど、やるしかないか。
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