【第三章 異世界生活】

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 自分の全身を覆う魔力に意識を向ける。ほんの少し時間を稼げば逃げられるってんなら、その少しにすべてをかける。  全力で、全開で、一直線に。 「うおおぉぉぉぉぉぉおッ!!」  肺の中のありったけの空気を吐き出しながら一気に突撃を仕掛け、まずは一発。  突っ込む勢いをのせたまま叩き付けるように右腕を振るう。  さっきと同じ単調な一撃は、やはり同様に簡単に左腕でガードされる。  けれど、でも、だからこそ。 「グギャッ!」  違いを確かめるにはちょうどいいってもんだ。  固いものがはじかれる軽い音ではなく、沈み込むような重い音が響く。 受け止められた一撃が、ガードした左腕ごと人狼に衝撃を叩き込む。  いける。無茶なやり方に体がきしむのを感じるけど、わずかな間ならもつ。  ちょろちょろ動き回るだけだったオレからの思い掛けないダメージに、人狼の意識が完全にこちらに向かう。  さあ、付き合ってもらうぞ!
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