【第三章 異世界生活】

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 数分か、数秒か、刹那の間か。  打ち合い、かわし、少しずつ形勢は人狼の方に傾いていく。  手足がしびれ、意識が揺れる。それでも動きは止めない。止めるわけにはいかない。  けれど、直撃こそ避けていても時間の経過とともに掠る数は増えていく。  しかも、こっちの魔力が少なくなってきてるからか掠るだけでもくらうダメージが増えている。そのせいで体勢を崩すことになって守勢に回る時間が増えやがるし。  そんでもって守勢に回れば攻撃を受ける回数が増え、必然的に避けきれないものも増えていく。  やばい、完全に負の連鎖だ。早くしやがれ包丁娘、もうあんまりもたな…… 「ガハッ!?」  ほんの一瞬意識が外に向いた瞬間だった。一度はかわした横薙ぎにされた腕が裏拳の要領でひるがえり、強かに打ち据えられた。  そのたった一発でオレの体は木の葉のように吹き飛ばされ二、三度氷の地面にバウンドしてようやく止まる。  痛ぇ。痛みでまともに体が動かせない。そんなオレを見て勝利を確信したのか、人狼はゆっくりといたぶるように歩を進めてくる。  敗者で、負け犬で、獲物でさえないエサ。たしかに完全にオレの負けだ。けど、 「オレたちの勝ちだ、犬っころ」
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