【第三章 異世界生活】

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 包丁娘も抵抗するだけの余力もなかったらしい。崩れゆく世界の中で、唯一動く人狼がその手で包丁娘を掴みとり、 「グギャァァァアアア!!」  叫びをあげたのはなぜか人狼の方だった。  え、なぜに?  訳も分からずポカンとするうちに、人狼の手から包丁娘が滑り落ちる。  力なくへたり込んだ包丁娘のすぐそばで、苦しみ悶え暴れる人狼。  逃げ出す余力もないのか座り込んだままの包丁娘をほっとくわけにもいかず、痛む体を引きずってなんとか包丁娘のとこまで行く。  けど、その必要はあまりなかったらしい。  そうこうする間にも世界の崩壊は進んでいった。空が割れ、大地が黒く塗りつぶされ、ついには暗転。  気が付くと、元の森の中にオレと包丁娘のふたりだけがポツンと取り残されていた。 「助かった、のか?」 「ええ、もう大丈夫だと思います」
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