【第三章 異世界生活】

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 生い茂る普通の木々が日の光を遮り薄暗い森の中だけど、少し進めば陽光のもとに出られる。つまりは森外周付近。 「彩色空間に飲まれたとこに戻ってこられたわけか」 「はい。あの空間は空白獣が無理やり作った言わば仮の彩色空間でした」  仮という部分に首を傾げるオレに、包丁娘は座り込んだまま返してくれる。 「放っておいてもしばらくしたら自然消滅する程度のものってことですよ。だから見た目よりずっと狭いですし、弱いところを突き崩して全体を砕くこともできたんです」 「それで空とかにまで穴が開いてたのか。でも、空間そのものが崩れたなら空白獣はどうしたんだ?」 「自身の本来の彩色空間に戻ったのでしょう」  立ち上がろうとする包丁娘。ゆっくりと腰を上げ、そしてふらつく。  慌てて支える、のはいいんだけど。  痛ぇぇぇえええッ! 腕がぁッ! 腕がぁぁぁあああ!!  死ぬほど痛い。これはアレだ。中学時代、好きなマンガの影響で唐突に木刀の素振りしまくった時の腕がつりそうになる感じの痛み。
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