【第三章 異世界生活】

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「なんにせよ、わたしが魔力を奪われたせいであの空白獣が強化されてしまったのは間違いありません。ギルドに報告しないと」  立ち上がろうとする包丁娘だったけど、突然変に力を入れたせいか咳き込んでしまう。  軽いただの咳。そう思ったんだけど、 「お前それ、まだ血が出てんじゃねえか!?」  口を押えていた包丁娘の白い手は、赤いまだら模様になっていた。さっき大丈夫とか言ってたけど、どこがだよ。 「平気ですって。これくらいなら慣れてますから、気にしないでください」  包丁娘はホントになんでもないように、それこそ会釈を交わすくらいの気軽な笑みを浮かべやがる。  慣れてようが痛いもんは痛いし、辛いもんは辛いだろとか。そうなった原因である氷蛇のおかげでオレも逃げ出せたんだから、気にしないのは無理だろとか。  言ってやりたいことは色々あるけど、今はそんなことより、 「ん」  包丁娘の前にしゃがみこみ、背中を差し出す。
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