【第一章 赤の魔女】

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 約20分後、オレはギルドの酒場の机のひとつに突っ伏していた。  さっきイロさんと飲んでた人たちが口々に慰めてくれてるけど、どうせなら笑ってくれた方が楽かもしれない。  優しさって、案外残酷だよな。 「それにしてもぉ、色無しですかぁ」  アリシアさんは、ほわほわしたその表情にいくばくか困惑の色を含んでいる。 「ありえないことではないですけど、めずらしいですねぇ。ギルドランクどうしましょうかぁ」 「そうだな、【身体強化(リーンフォース)】と【魔力障壁(ウォード)】も心器なしでは発動できなかったしな。Eランクを付けていいものかどうか」  イロさんも判断に困っているようだ。  ちなみに、イロさんがあげたふたつの魔法は基本も基本、日本でいうところの中学生にあたる段階で徹底的に反復練習を繰り返す部分らしい。  ここができて初めて、Eランクつまりは小型の魔物との戦闘任務を受けられるようになる。  これより下のランクは最低位のFランクの安全な場所での採取任務などだけのランクしかない。  赤・青・緑・白・黒、五つすべての属性が使えず、無属性の基本ふたつも魔力制御能力の上昇というすべての心器の持つ根本的な特性を借りてやっと使える始末。  言ってて悲しくなるけど、もうFランクしかないと自分でも思う。  周りの酔っ払いたちも、下から登るのが面白いとか、自分も初めはFだったと慰めてくれる。
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