【第三章 異世界生活】

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「いえ、そんな。本当に平気ですから」 「ん!」  語気を強めてもう一度。そういうことは、きちんと立って歩けるようになってから言いなさい。  魔力の暴走ってのがかなりこたえてるのか、咳きこんだ後も包丁娘は腰を上がれてはいない。  というか、ギルドに報告するにしても、ヘロヘロのやつを連れて歩くよりは背負ってった方が間違いなく早いし。  本当に大丈夫ですからとか、これ以上ご迷惑をおかけするわけにはとか、後ろからゴチャゴチャ聞こえていたのも、無視し続けてたら聞こえなくなった。  静かな時間が流れる。背中を向けていて表情とかも見えなかったから、その間に包丁娘が何を思ってどんな反応を見せていたのかはわからない。けど、 「えっと、じゃあ、その、失礼します」  最終的には折れて、オレの背中につかまって来た。  落とさないようにしっかり背負って立ちあがる。クソ、腕だけじゃなく足もハンパなく痛ぇ。けど、自分から言っといて落とすわけにはいかない。我慢だ、我慢。
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