【第三章 異世界生活】

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「じゃあ行くぞ」  ゆっくりと歩きだす。一歩一歩確実に。力の入れ方に気を付ければ、まあそんなでもないな。  オレが歩くことに集中してる間、包丁娘は後ろで借りてきた猫みたいになっていた。  ゆっくりとした時間。それを先に破ったのは、包丁娘だった。 「あの、ありがとうございます」 「へ? ああ、気にすんなって。たしかにちょっと重いけ……」 「わたしそんなに重くないですよッ!!」 「ぐへッ。首を絞めるな、首を!」  というか、暴れんな。支える腕痛えんだって。  バタバタ騒ぐ包丁娘だったけど、しばらくすると疲れたのかオレの肩に力なく頭を預けてきた。 「そうじゃなくて、もっと色々です」 「色々?」 「はい、色々です」  耳元で弱々しい息遣いが聞こえる。やべえ、いろんな意味でやべえよコレ。
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