4604人が本棚に入れています
本棚に追加
森のざわめきをぬけ、暖かな日差しの中をえっちらおっちら街へと向けて歩き続ける。
「今だけじゃなくて、彩色空間で時間を稼いでくださったこともそうです。それになにより、ギルドでのお姉ちゃんは楽しそうでしたから」
背後の包丁娘は見えない。けど、穏やかなその声から表情は分かる気がした。
「そう思うんなら、もう刃物沙汰はやめてくれよ」
「それは約束しかねます」
「おい、感謝の念はどこ行った!」
突然声のトーンが戻ったうえに、きっぱりと言い切りやがった。
やわらかな笑い声がオレの耳を打つ。
「それとこれとは話が別ってやつです。感謝はしてますけど、お姉ちゃんに近づく悪い虫に容赦はしませんよ」
「……シスコンめ」
「否定はしません。わたし、お姉ちゃん大好きですし」
なんたってお姉ちゃんは、と包丁娘の姉自慢が始まる。まあ確かにシエナはかわいいし強いし料理もうまいし、自慢の姉ってのも分からんでもないか。
包丁娘の声をBGMにゆっくりとギルドを目指して歩き続けながら、ふと気付く。
最初のコメントを投稿しよう!