【第四章 反省と後悔と】

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 弱きを守り強きをくじく。  それは分かりやすい正義の指針のひとつ。王道にして絶対の正義の味方が掲げるべきお題目であり、非常によく聞くありふれた言葉だ。  王道であり、ありふれているということは多くの人が知り普遍性があると言っていいだろう。  では、この弱いとはなんだろう。強いとはなんだろう。  単なる腕っ節のことかもしれない。しかしここでもうひとつ、とある言葉を思い出していただきたい。  本当に強い人間とは心の強い人間のこと、というやつだ。  これも陳腐で月並みで平凡で、だからこそ確かにそうだと思う人も多い言葉だろう。  この二つを合わせて考えるとだ。真に正義の味方が守るべき弱き者とは、力なき人間ではなく心ない人間のことになるのではないだろうか。 「妄言は分かったわ。で、結局なにが言いたいのよ、あんたは?」 「腕と足がまだ痛いんで働きたくないでござる」 「却下よ!」  またしても、ギルドの昼は騒がしかった。
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