【第一章 赤の魔女】

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 で、意気込んだのはいいんだけど、 「なんも出てこねえよ」  森に入ってからかれこれ半時間は歩いてるけど、魔物どころか小動物一匹見ねえよ。  普通の動物と魔物の違いとか分かんねえけどな。たぶん魔物っていうくらいだしやばそうな見た目なんだろう。 「そうだね。たしかにこの森は魔物が少ないんだけど、いくらなんでもこれだけ歩いて一匹も見ないのは珍しいね。でも見かけないからって気を抜いちゃだめだよ」  了解とだけ返し、なんとなく頭に手をやる。  手に伝わるのは堅い質感。森に入った時点で王冠は出してある。もちろん【身体強化(リーンフォース)】と【魔力障壁(ウォード)】も発動済み。  読んで字のごとく身体能力を強化するものと身を守るもの。このふたつは消費が少なくかけっぱなしにする人も少なくないそうだ。  【魔力障壁(ウォード)】の方は強い衝撃を受ける瞬間だけ消費魔力が増えるらしいから、戦ってるとガンガン魔力をくうらしいけど。 「そういえば、シローの心器の能力ってなんなの?」  ふと思いついたように無邪気に笑いかけてくるクリスに、オレは視線をそらす。 「いやー、じつはそれもまだ分かってないんだわこれが」  この王冠、元の世界でも自分の部屋でちょくちょく出してみてたけど、変わったことが起きたためしがない。 「えっと、じゃあ名前は。心器って名前から能力の方向性とか属性くらいは分かることも多いし」  クリスのさらなる追及を受け、なんか突然口笛が吹きたくなってきた。  特に意味はないんだけどね、たまに吹きたくなるよね口笛。 「名前も分かってないんだ」  クリスの表情に苦笑が混じる。 「心器って能力はともかく名前は最初から持ち主に伝わるはずなのに、シローって色々規格外だね」  悪い方にばっかりだけどな。
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